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幕末の風雲児に学ぶ
おもしろき こともなき世を おもしろく
松下村塾生、幕末の風雲児と言われ、幕末の日本を操ったキーマンと言われた高杉晋作が放った句だ。
よく使われる名句なのでおそらくご存知の方も多いと思う。
今日は高杉晋作の思いに学んでみたい。
高杉晋作と聞いてどんな人物を思い起こすだろうか?
幼い頃は学問はむしろ嫌いだったようで剣術の稽古ばかりしていたらしい。
しかし、吉田松陰主宰の松下村塾に入学した際、松蔭に「久坂に劣っている」と言われ学問に励むようになったと言われている。
その後、久坂と切磋琢磨しお互いを高め合ったという。
吉田松陰の門人の中で最も波乱に満ちた生涯を送ったのが高杉晋作だ。
彼が作った「長州奇兵隊」が事実上の維新の原動力になったといっていい。
高杉晋作の行動が革命の原動力となったことについては、吉田松陰の思想を抜きにしては考えられない。
幕府は吉田松陰を斬首したが、その思想までを殺すことができなかったのだ。
そんな思想思考、志を受け継いだ男なのである。
最後は肺結核を患いながらも無理して指揮していたが、無理がたたり29歳の若さでこの世を去っている。
冒頭で紹介した名句には2つの歌が存在すると言われている。
おそらくアナタにも聞き覚えがあるのは、
「おもしろき こともなき世を おもしろく」だろうと思う。
しかし、本来読まれたであろう句は、
「おもしろき こともなき世に おもしろく」とされている。
一見するとどちらも同じ句のように思えるが、2つの句では意味合いや印象が変わってくる。
長州藩士騎兵隊の創設者、幕末の風雲児とまで言われた男が読んだ句ともなると、豪快さを想像してしまう。
広く一般に知られている句がまさに豪快さを強調しているのだ。
その一方で、後者の句にはどこか悩める繊細さが読んで取れる。
あまり知られていないが、実はこの句には下の句があるのはご存知だろうか?
幕末当時、高杉晋作に様々な援助をした女流歌人・野村望東尼が付け加えたとされている。
「すみなすものは 心なりけり」
この下の句を本来読まれたとされる句に付け加えると、野村望東尼の優しさが感じ取れる句に変わるのだ。
それは、若く、実は繊細な心の持ち主であった高杉晋作を励ます句にほかならない。
通すと、
「おもしろき こともなき世に おもしろく すみなすものは 心なりけり」
語訳
「自分の気持ちや、考え方次第で、人生は面白くもつまらなくもなる」
時代の背景からこの句が生まれたのであれば、高杉晋作は何を伝えたかったのであろう?
私なりに解釈を入れると、おそらくこういうことではないかと、勝手な推測ができる。
私たちが生きる世界はただの現象にすぎず、そこにはどんな意味すらも、価値判断も、意図すらもない。
あるのはただの無為自然の世界でしかない。
それにひとつひとつ意味付けをしていくのは、我々ひとりひとりの感覚であり、解釈である。
ゆえに、己がしていることも、してきたことも、世の中が変わろうとしていることも全てが所詮はその程度のものではないのか。
そもそも出来事に意味がないのだから、捉え方次第で面白くもなるのだ。すなわち、思考次第だと。
最後に
この世に生をうけ、日々葛藤しながら生きている。
おそらく全人類がそうであろうと思う。
そんなときにこそ、高杉晋作が詠んだ句を思い起こしてみてはいかがだろうか。
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